熊本県指定重要文化財である菊池市旭志岩本(当時、菊池郡旭志村岩本)の円通寺(えんつうじ)に残る石門の保存修理工事が行われました。正確な築造年は解っていませんが、170年ほど前に造られた石門、当時県内各地に架橋されたアーチ式石橋と構造が似ており、技術的にも深い関連があるものとして、ここに紹介致します。
円通寺の石門と境内の石仏 円通寺は菊池氏初代の藤原則隆により、延久年間(1069〜1074)に山城国(現在の京都府南部)より本尊を移し建立され、菊池一族の厚い信仰を受けた。石門は天保(1830〜1844)頃、自忍和尚によって造られ、総幅5.4m、総高さ3.9m、輪石の周りに切石を積み上げ、寄せ棟作りの屋根を載せた唐風の石門である。屋根石等が崩れかけていたものを、平成12年度の県事業として復元修復された。(以上、現地案内板をもとに) なお境内の88箇所に各2体と他に13体の計189体(当時の旭志村教育委員会より)の石仏があり、四国霊場と同じように88ヶ所巡りのコースも造られている。また地区の人々により、シャクナゲやハスなどが植えられており、花見もにぎわうことでしょう。 |
円通寺石門正面図 今回の修復工事に携われた村田グループ建築設計事務所田中正信様よりご提供戴きました。(本ページに挿入するにあたり、原図を縮小したため数字や線が見え難くなり、新たに書き加えたもので、部分的に原図と異なり、正確さに欠けるところもあることをお断りします) |
「足りなくなったら出来あがらない。まして余ったら大変なことになる。石組みの石(パーツ)のことである。削らず、割らず,ガチンガチンに接着せず、約300個のパーツをバラバラに解いて、在ったように、在った場所に、組み上げねばならない・・・」と、修復工事の設計を担当した田中さんの報告書にあります。正確に復元するために使った沢山のフィルム、鉛筆とトレーシングペーパー、チョークの数々。設計図や資料が残って無い重要文化財復元の苦労が伝わってきます。以下、修復工事過程を田中さんのレポートの一部を抜粋して紹介致します。
写真撮影:2001/03/11 最終更新:2005/03/22