アーチ式石橋の架け方

アーチ式石橋の造り方を順を追って、図で説明します。

 
石橋を造る場所に支保工を造ります。木材でアーチ(輪石)を支える為の柱を組み立てます。これを支保工といい、大工さんが担当します。支保工を組み立てる場合、川の流れを変えるなどの工事を行う場合もあります。
アーチを両側から順に組んでいく。この石を輪石(アーチ石)という。輪石を組んだ部分から壁石も積んでいく。最後に頂上部分で組み合わせる輪石を「要石」という。熊本では、輪石には、豊富な阿蘇凝灰岩が利用されています。
支保工を取り除くと、アーチが完成。輪石が音を立て、しっかりと噛み合わされるとのこと。支保工を取り除くこの瞬間が、一番緊張する時。うまく噛み合っていない時は、崩れ落ちるのでしょう。支保工は橋が完成後に取除く事も。
アーチ石の上に、壁石を積んでいく。
壁石の積み方は様々で、平行積みとか、きれいに磨き上げたり、幾何学模様をつけたり、自然石をそのまま積みあげる乱れ積み等。
壁石が積み上がったら、小さい石橋や資金不足の場合、これで一応完成となります。
アーチ石橋の構造上最も重要な部分は輪石であり、壁石は崩れた場合、そのたびに積みあげればいいのです。
最後に欄干を造れば完成です。
欄干にも、彫刻などで豪華に仕上げたものもあります。この例は、アーチが1つの単一アーチ橋ですが、アーチ部分が2つ以上ある2連、3連のアーチ橋もありますが、造り方は同様です。
 石は引っ張りや曲げに弱く、圧縮に強い。その特徴を生かし、圧縮の重みを両岸に伝えるのがアーチ式石橋です。そこで、アーチ橋を架ける場合は両岸の地盤が強固であることが必要です。両端の地盤が弱いと、アーチは崩壊します。アーチの両端は、アーチ形がつぶれないように強固な岩盤であることが理想です。ローマの石橋が2000年を経た今でも健在なのは、強い岩盤なしには考えられません。地盤が弱い場合は、基礎杭などで頑丈に補強することが必要です。
 
 最初、「輪石部分を完成させ、支保工を取り外した後で、壁石を積み上げる」ようにしていましたが、石匠館の上塚尚孝館長のアドバイスにより、「輪石を組んだ部分から壁石も積んでいく」ように、図も含めて訂正しました。なお、輪石の厚さは図の3倍程としたほうが一般的かも知れません。(2000/08/20 更新)
 なお、支保工はアーチより少し大きめに作成し、要石を納めてからを一挙に外すか、ジャッキにより徐々に降下させて締まり具合を検討しつつ修正していくほうがよく、支保工は上記のような台枠を組む以外に、土俵や土砂を積んで形成する施工法もある。(石井一郎著「石造りの文化」より、2002/08/06 更新)
 アーチ橋施工手順のイラストに関し、赤色で記載の支保工を取外すのが少し早すぎるのでは。私が施工管理者なら、取外しは最後にします。これらアーチ橋の技術は、現在も小型ごみ焼却炉の燃焼室天井部の築炉(耐火煉瓦の場合)に使われる事がありますよ。参考までに。
 「支保工を取外すのが少し早すぎるのでは」とのメールも。ありがとうございました。壁石や欄干等まで完成してから取り外してもいいかも知れません。そのような説明も多いかと思います。ここでは、輪石が完成した時点で支保工は必要なくなるという意味で描いています。(2005/06/20)
 
 自分でもアーチ式石橋が造れそうですね。切断したり削ったり石を加工するとなれば、高度な技術が必要ですが、自然石をそのまま使った「自然石アーチ橋」や「レンガやブロック」などを利用したものだったらできそうです。支保工を作るのが難しそうですが、支保工の代わりに土や砂を積んでもよさそうですね。皆さん、挑戦してみませんか。(最終更新:2005/06/20)
 <制作>熊本国府高等学校パソコン同好会

肥後の石橋へ 桁からアーチへ アーチの強さの簡単な実験