蘇った石橋!(木鷺野橋の復元)その3
- アーチの形が確定していないので、決定した配列により各輪石を図面上で組み合わせるか、仮組みをしなければ径間が決定できません。万一、復元作業中にアーチ曲線の間違いが発見されれば、次のような大きな問題が生じるからです。
- 疑似単芯円なので、半径も間違えれば、径間(けいかん)もずれる。
- 径間が違えば、支保工・基礎・堀削の位置もすべて違う。
- すべて解体し、設計を変更して、最初からやり直すことになる。
- 特に合端の噛み合わせの状態などは、実際に合わせてみなければ解らない。可能な限り、全部を仮組みし、半径・径間(けいかん)・拱矢(こうし)・幅の確認をして、最終設計を行うのが理想的である。新規に作る橋であれば、考慮する必要がないことである。クレーンなどを利用して、90度転倒させて合端線を密着させながら、仮組み。その結果、径間3,400mm、拱矢1,280mm、拱矢延長上の半径1,769mmとなった。矢部町文化財の記録による、拱矢1.45m、径間3.40mとすると、輪石の背面に隙間が空いてしまい、石は噛み合わない。資料と現実が一致しない。輪石の組立の最終段階では、支保工を上下させてアーチを調整し、要石(かなめいし)を設置する必要があるから、支保工の上端は近似曲線でよいとして、実測値の最小半径を支保工の半径とした。支保工の半径を1,730mmとする。
- 復元場所の測量調査、元の木鷺野橋の両岸は頑固な岩盤だったのだが、復元場所には岩盤がない。代わりになるコンクリートの基礎が必要。また、県内の石橋の特長の一つは、資金不足により、壁石はそこらの石を拾って乱れ積みである。木鷺野橋も例外ではなかったのだが、布積みで壁石を設計。本来の復元にはコンクリートなぞ使用すべきではないのだが、PL法もあり、先々の責任問題を考え、「輪石の復元をもって復元とする」、という設計となったとのこと。現代における文化財復元というものの難しさの一面でしょうか。
- 今回の移転復元を終えて、尾上さんは「正確な復元には、多大な時間と費用が要る。また、正確に復元できたのかどうかも不安だ。」と述べられております。さらに、「正確な資料さえ残っていれば、費用も半分ほどにできたかもしれない」と。さらに、「現存する石橋の正確な調査を先行すべきだ!」と訴えておられます。水害ばかりではなく、河川整備等で、今後さらに多くの石橋の移転や復元問題が続出することでしょう。その調査項目も、以下のように具体的にあげておられます。
石橋の調査項目
- 外径寸法(測定可能な部分はすべて)。特に重要な拱矢・径間・幅については、cm単位で、また測定個所のルールを統一することも重要である。
- 可視部分だけでも、すべての石の写真撮影。特に輪石については、下方から見上げた連続写真があれば、配列を間違うことがない。
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<制作>熊本国府高等学校パソコン同好会