熊本文学散歩


 

若山牧水の歌碑を訪ねて

 先日、千葉県在住の金森様より「文学散歩に、若山牧水がないのが残念です。牧水は何度も熊本に来ていますが、歌もたくさん残しています。
むらむらと中ぞら掩ふ阿蘇山のけむりのなかの黄なる秋の日
名にし負ふ銀杏は秋の日にはえて澄みしみ空に天守閣高し
阿蘇が嶺に白雪降りぬ昨日こそ登り来にしか白雪降りぬ
 歌碑もどこかにあるのではないでしょうか。なかったら、建てる運動を起されては・・・。(2005/02/03)」 とのメールをいただき、調べてみました。県内にも、大津町や南阿蘇村に歌碑があることを知り、さっそく訪ねてみることに。

阿蘇のみち大津の宿に別れつる
役者の髪の山ざくら花
 (若山牧水)
 この歌碑は大津町の中心部にある日吉神社境内に。ここは春のツツジで有名な場所でも。歌碑には、牧水の歌以外にも、大津を歌った方々の短歌5首も刻まれています。
名を聞きて久しかりしか栃の木の
いで湯に来り入ればたのしき
 (若山牧水)
 阿蘇の玄関口、南阿蘇村(旧長陽村)栃木(とちのき)の国道沿い荒牧旅館の庭に、奥様の歌「妹と背の滝つ瀬あれや目ざましのたきにそひたる鮎かへりの滝」とともに。
 若山牧水(1885.8.24〜1928.9.17)は、お隣の宮崎県生まれの偉大な歌人。知られた短歌としては
幾山河越えさり行かば寂しさの はてなむ国ぞ今日も旅ゆく
白鳥はかなしからずや空の青 海のあをにも染まずただよふ
などでしょうか。この2首は私たちの国語の教科書にもあり、青年時代の作品だそうです。雄大な自然に対する孤独感。リズミカルというか実に見事な言葉、思わず朗読したくなります。牧水は、現在最も愛されている歌人の一人で、歌碑も多いようです。明治18年8月24日、宮崎県東臼杵郡東郷町に生まれ、本名は繁。山や海の自然を愛し、旅を好むのが歌人や俳人なのでしょうか。私も山や自然が大好き。山や旅といえば種田山頭火も。「幾山河越えさりゆかば・・・」の歌と、山頭火の「分け入っても分け入っても青い山」の句との対比も面白そう。短歌と俳句との違いもありますが、生きた時代も重なる二人。ともに酒が好きだったとのこと、お二人がお酒を飲んだらどんな話をしたのでしょうか。山頭火は家庭を顧みない放浪癖、家庭を大事にしたという牧水、生活・性格的違いもありますが、交友関係は?更には、北原白秋とは早稲田で同級、同じ下宿で仲も良かったとのこと。もし五足の靴の旅に同行していたら「幾山河越えさり行かば・・・」が天草の風景となっていたのか。そんなことはありえないことでしょうが、歌風は変化したかも知れませんね。「五足の靴」も「幾山河」も、同じ明治40年の夏、興味は尽きません。(写真は2005/02/13)
 今回は、若山牧水でしたが、県内には他にもたくさんの文学碑があります。写真を撮り次第、紹介していきたいものです。(作成:2005/02/16 最終更新:2005/02/17)
<制作>熊本国府高等学校パソコン同好会

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