熊本の方言(熊本弁)

熊本弁の接頭語・接尾語(接頭辞・接尾辞)

 「ウッタマガル」とか「キャーモドル」などの「ウッ」や「キャー」、県外の人にとっては耳障みみざわりかも知れません。しかし、接頭語も熊本弁の特徴の一つかと思います。接頭語と言えば接尾語、そこで接尾語も!(2004/10/20)

◆接頭語(接頭語でいいのかな?)
接頭語:ある語の上に付き、意味を添えたり、調子を整えたりする語。
語意が強いというか荒くなるので、使い過ぎに注意!
 
接頭語 語 例 意 味(地域差もある)
イチ、イッ イチクウ 「食う」の強調(一度に?)
イックザス 「崩す」の強調
イックァヤス 「壊す」の強調
ウウ ウウアジ 大味、「ウウ」は「大ざっぱ」
ウウ飯グリャー 大飯食い、「ウウ」は「大」
ウウバカモン  大馬鹿者、「大」と書いて「ウウ」と読む
ウチ ウチカブル 「覆う」、「被害を被る」強調
ウチクラワスル 同意の「打つ」を追加して強調
ウチワスルル つい忘れてしまう
ウッ ウッカ(クァ)エル 「壊れる」の強調(?)
ウッタマガル ひどくビックリする
ウッチラカス やたらと散らかす
ウッピロゲル あたり一面に広げる
ウッポグ、ウッポガス (一気に?)穴を開ける
ウッピャシャグ、ウッポシャグ 勢いよく平らにする、ペチャンコにする
キャー キャーアクル つい、開けてしまう(強調)
キャーアタル たまたま当たる
キャーシュウー とりあえずしてしまおう
キャーセク うっかりして閉める
キャーモドル さっさと帰ってしまう
キャーネマラカス うっかり腐らす
サデ サデマワス かきまわす、かき混ぜる
サデクリカヤル ひっくり返る(サデクリカエルとも)
サデコクル 転ぶ(強調、自戒の念も?)
サデヨスル かき集める(強調)
ツッ ツッカグル (思いもよらず)欠けてしまう
ツックヤス、ツックユル (崩す以外に)壊す、壊れる
ツッコケル (思いもよらず)(ちょっと)転ぶ、ツッコクルも
ツッパシル 何も考えずにただ走る
ツッポガス、ツッポグ (つい)穴を開けてしまう
ツン ツンオル 折る、折ってしまう(強調)
ツンクザス 壊す(強調)
ツンマガル 曲る、曲がってしまう
ツンムケル すりむける、剥けてしまう
ハチ ハチクル (思わぬ時、待てずに)来てしまう
ハチワル 特に大事なものを割ってしまう(強調)
バチ バチクリカエス (箱などを一度に)ひっくり返す(強調)
バチクリヤル 投げやる(強調)
ヒチ ヒチクドカ くどい(強調)
ヒチメンドウカ 面倒だ(強調)
ヒッ ヒッカカユル ひょいと抱える(強調)
ヒッカ(クァ)グ うっかり欠く
ヒッカン(クァン)ガス うっかり引き抜く
ヒッコボス うっかりこぼす
ヒッシャグ 押しつぶす(強調)
ヒッタマガル ひどく驚く(強調)
ヒットダス うっかり出してしまう (ヒット+ダス か?)
ビッ ビッシャグ 押しつぶす(強調) ヒッシャグの変化か
ヒン ヒンナムル (つい)なめてしまう(強調)
ヒンニギル (つい)握ってしまう
ヒンヌク 引き抜く(強調)
ヒンノム (つい)飲んでしまう
ヒンマガル 曲がってしまう(強調)
フン フンシャグ (つい)踏み潰す(強調)
フンポグ (つい)踏み破る,踏んで穴をあける(強調)
フンポシャグ (つい)踏み潰す(強調)
ホッ ホッチラカス いっぱい散らかす(強調)
ホッパラカス 放りやる、放っとく
   
◆接尾語(接尾語でいいのかな?)
接尾語:語の下に付いて意味や働きを添え、別の語をつくる語。
別ページの助詞・助動詞と重複しているものも!
 
接尾語 語 例 意 味(地域差も)
カイタ 良カカイタ 良いですか(疑問、少し不作法?)
カス セビラカス からかう(使役?)
カブル バチカブル 罰が当たる(受動?など)
キル カッキル、~シキル 書ける(可能)、~することができる
クサイ アアタクサイ、俺ガクサイ ねぇ貴方、俺がねえ(強調)
クル マゼクル 混ぜる(強調)
ゲナ 言ウタゲナ 言ったとさ、言ったそうな(伝聞?)
ゴタル 遊ボゴタル、子供ンゴタル 遊びたい(願望)、子供のようだ
言ワス、泳ギヨラス おっしゃる、泳いでおられる(尊敬)
タイ 良カタイ 良い(強調、「バイ」に比べ冷静・客観的)
タクル 打ッタクル、ネタクル 強く打つ、塗りつける(強調)
ダクル フンダクル 強く踏む(強調)
テタイ 言ウタテタイ 言ったとさ、言ったそうな(伝聞?)
テナ 持ットッテナ 持ってるの(疑問)
行クト 行くの(疑問)
行クド 行くだろう(推定)
トシャガ 言ワントシャガ 言わなければ(仮定)
トル、ドル 風邪ヒートル、泳イドル 風邪を引いている、泳いでいる(完了形)
トヤ 行クトヤ 行くのか(疑問)
ドン イチゴドンクヲー イチゴでも食いましょう(願望・例示・総括?)
ナッセ イキナッセ 行きなさい(やわらかい命令)
ナット ケーキナット ケーキでも(願望・例示・総括?)
ナハル オイデナハル、オンナハル いらっしゃる(敬語)
バイ ユウタバイ 言ったよ(強調、自己主張が強い)
バイタ チガウバイタ 違うぞ(強調、自己主張が強い)
ブル ヒッキャブル 引き破ってしまう(完了?)
マッシュ 行キマッシュ 行きましょう(勧誘)
マッセ オイデマッセ お出でください(丁寧)
マッセン 済ンマッセン すみません(丁寧)
ヨル、ヨッ 遊ビヨル、雨ン降リヨル 遊んでいる、雨が降っている(現在進行形)
   
 民謡「おてもやん」の歌詞にある「川端町(かわばたまち)つぁんきゃあめぐろい」の「キャ」など、熊本弁の特徴の一つに接頭語があるのではないでしょうか。当初は接頭語だけを紹介する予定でしたが、接頭語とくれば接尾語。「~タイ」や「~バイ」などの接尾語(?)も熊本弁の大きな特徴かと、ここに紹介します。しかし接頭語や接尾語、単語の一部のようにも思え、判断が難しそうで、自信はありません。間違い等、ご指摘いただければ助かります。なお、それ自体が単語でなく,後続する名詞や動詞など,他の単語に結びついて始めて,具体的意味を表現する短い結辞(けつじ)ですので,「接頭辞」,「接尾辞」と使うべきとのアドバイスもいただきました。
 更には一つの接頭語でも、それに続く単語によって付加される意味が違ってくるのも。これも熊本弁の奥の深さ(?)なのでしょうか。熊本を紹介する様々なWEBをいろいろと発信していますが、方言だけでも、文法だけでも、いや接頭語だけでも、調べたらきりがなさそうです。今後、どの程度やれるかは解りませんが、専門家にはできず(?)、素人だからこそできることもあるかとがんばってみます。しかし、国語を苦手としているものばかりで、間違いもあるかと思います。ご指導いただければ幸いです。宜しくお願いします。
制作:熊本国府高校PC同好会(最終更新:2010/02/16)

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