熊本文学散歩


漢詩について

 漢詩と言えば、国語や古典の時間を思い出し、どうも苦手意識が強いものです。ましてや自分で作る何んて、とても難しそうです。何せ中国語、外国語なのですから・・・。国語の教科書だけでなく、県内にも漢詩の碑がいくつか残っています。漢詩に親しむ糸口にでもと、本校の馬場守一先生に漢詩についてお伺いしました。先生は趣味で漢詩を研究されておられ、先生の漢詩もあわせて紹介させていただきます。漢詩は縦書きにすべきかと試してみたのですが、ブラウザによっては対応していないものもあることをお断りしておきます。



◎漢詩の大まかな作り方

  1. 平仄ひょうそくというものがあります。
    平仄は「字源じげん」という辞書で調べます。
     
  2. いんを踏む
    韻も「字源」をみればわかります。
    七言絶句の場合、転句を除く起句、承句、結句の最後の文字が同じひびき(韻)をもっています。(下の例では さん というグループの韻)
     
  3. 平仄ひょうそくいんの関係 (本ページが横書きの為、解り難い点も)
     
    1. 起句の、上から(ここでは左から)2番目の文字が平(〇)の場合(平起式とか平送りなどと呼ぶ)
      4番目の文字は仄(●)、6番目の文字は平(〇)にならなければなりません。
      これは結句も同じです。承句と転句はその逆になります。
      1番・3番・5番目は平・仄どちらでもかまいません。
      また、7番目の文字は韻を踏むところで、起・承・結句で平(◎)となります。
      但し、転句のみは仄です。
       
    2. 起句の、上(左)から2番目の文字が仄の場合(仄起式とか仄送りなどと呼ぶ)
      これは、平起式のまったく反対になります。但し、7番目の文字は韻を踏むので平起式と同じく起・承・結句で平(◎)となります。
     
  4.  次に、平起式の例を示します。(七言絶句)


        早 発 白 帝 城   李 白 作
     
       
    1 2 3 4 5 6 7
         〇  ●  〇 ◎
     
     朝 辞 白 帝 彩 雲 間 … 刪(さん)

          ●   〇   ● ◎
     
     千 里 江 陵 一 日 還 …

          ●   〇   ● ●
     
     両 岸 猿 声 啼 不 住

          〇   ●   〇 ◎
     
     軽 舟 己 過 万 重 山 …

     
     
 
  つと白帝城はくていじょうを発はっす  李 白 作


  あした白帝彩雲はくていさいうんかん

  千里せんり江陵こうりょう一日いちじつにしてかえ

  両岸りょうがん猿声えんせいいてまざるに

  軽舟けいしゅうすで万重ばんちょうの山

 
 
 
平仄ひょうそく 漢字をその音の響きによって平字と仄字にわけたもの。
平字は、平らに発音して高低がない。
仄字は、調子が片寄った字音のことである。
いん 中国語の1音節のうち、はじめの子音を除いた残りの母音を中心とする部分。
 
 

 次の漢詩は、馬場先生が作られた「秋日訪西天草」です。頼洲は先生の雅号です。
  

 秋 日 訪 西 天 草  馬 場 頼 洲
 
   〇   ●   〇 ◎
 暮 天 鳶 舞 富 岡 秋

   ●   〇   ● ◎
 呉 越 無 看 坐 惹 愁

   ●   〇   ● ●
 酌 友 吟 詩 勝 遊 足

   〇   ●   〇 ◎
 一 輪 明 月 照 苓 州
 



 秋日しゅうじつ 西天草にしあまくさたずぬ  馬 場 頼 洲


 暮天ぼてん とびは舞う 富岡の秋

 呉越ごえつ る無く そぞろ うれい

 友とみ 詩をぎんじて 勝遊しょうゆう 

 一輪いちりんの 明月めいげつ 苓洲れいしゅうを てららす

 

 頼山陽の作「雲か山か呉か越か・・・」の詩碑を見ながら作られたとのことです。苓北町の富岡城址近くの海岸に碑は建っています。眼下には白砂の浜が続き、荒々しい波の音が響き、海の向こうは漢字のふるさと中国大陸です。
富岡:天草郡苓北町の古い港町で、岬に城址が残っている
呉越:中国戦国時代仲が悪かった呉の国と越の国
勝遊:勝ち誇った様、満足した様
苓洲:苓北町一帯

 すごい!中国語で詩を作るなんて・・・。「日本人は漢字を知っているので、辞書を片手に平仄や韻など、漢詩のルールや型を考えていけば作れるよ!」ということでした。文豪夏目漱石も数多くの漢詩を作っているとのこと。短歌や俳句を作る場合も、辞典や図鑑などを調べながら作るそうですから、さほどの違いは無いのかな・・・。とっつき難いと思っていた漢詩でしたが、馬場先生のお陰で身近なものかと感じはじめたところです。私にでも作れるのかな・・・。
 ところで漢文の読み方ですが、返り点などを使って中国語を日本語に翻訳して読むなんて、大変なアイデアだと感心します。「もし、日本の隣がイギリスだったら、今ごろ英語に返り点をつけて読んでいたのかな?」なんて、想像しただけでも面白いですね。(2003/08/30)

最終更新:2006/09/11

<制作>熊本国府高等学校パソコン同好会


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