石造めがね橋の各部名称と用語

 石造眼鏡橋を調べていくと、聞きなれない名称や用語が次々、そこで各部の名称や用語を簡単に紹介しておきます。


支保工は、要石を設置したら取り外します。支保工の支えが無くなった輪石は、
自らの重みで、相互にしっかりと噛み合い、アーチが完成します。
アーチ石橋の架け方については、別ページを!
 
用語(よみがな) 説明(用語は人によって様々なものも)
アーチ
(arch)
上方に弓形に曲がった梁(はり)。石造アーチの場合、両端から石材ブロックを少しずつ迫り出して曲線状に作り上げていく。アーチに架かる荷重は、次々と下位の迫(せり)石に伝わり、アーチの両端に達し、堅固な構造となる。全ての輪石が隣同士で圧縮力を介して互いに支えあってアーチを形成している。迫持(せりもち)、拱(きょう)とも。アーチが連続してトンネル状のものをアーケード(arcade)、アーチを1回転させて半球状になったものをドーム(dome)ともいう。蒲鉾(かまぼこ)状の筒型ヴォールト(barrel vault、別名トンネルヴォールト、アーケードと同義にも)や筒型ヴォールトを2つ直交させた交差ヴォールト(cross vault)もアーチが基となっている。(参照:桁からアーチアドバイスメール
橋長(きょうちょう) 橋の長さ。欄干がある場合、欄干の端から端までを測る場合も。bridge length。
橋幅(きょうふく) 橋の幅。アーチ幅と同じ場合もあるが、石を突き出して橋面を広くする場合もある。幅は一定でなく、最大幅と最小幅が。bridge width。
径間(けいかん) アーチの直径、アーチの内から内までを測る。スパン(span)とも呼ぶが、径間とスパンを区別する場合も。
拱矢(きょうし) 基礎(橋台)の上から要石の下側までの距離(支保工の高さ)。基礎(橋台)が両岸で違う場合は、低いほうから要石の下側までの距離。ライズ(rise)とも。慣用読みで「こうし」とも。
橋高(きょうこう) 平均的な水面から橋面(路面)までの長さを測る。
輪石(わいし) アーチを構成する石で、めがね橋を支える一番大切な石。アーチ石(arch stone)、拱環石(きょうかんせき)、リング石とも。材質は九州では阿蘇溶結凝灰岩が多い。
要石(かなめいし) アーチの最高部にある輪石。最も重要な石という意味ではない、輪石は全てが重要。要石を備え付けるとアーチが完成することから、アーチ完成の記念すべき輪石ではある。楔石(くさびいし)、拱頂石(きょうちょうせき)、冠頂石(かんちょうせき)、キーストーン(keystone)とも。
壁石(かべいし) 中詰め土砂が崩れないように、橋両側面の輪石の上方に積む石。乱れ積み(自然石をそのまま不規則に積み上げる)、扇積み(面や角を加工した石をアーチを中心に扇形に積み上げる)、水平積み(面や角をきれいに整えた石を目地が水平になるように積み上げていく、平行積みとも)などがある。肥後の石橋は乱れ積みが多い。側壁、スパンドレル(spandrel)とも。
拱矢比(きょうしひ) 径間(スパン)を拱矢(ライズ)で割った値。アーチが完全な半円なら拱矢比は2。一般的に、拱矢比は山間部では小さく、平野部では大きい。(拱矢比の逆数、即ち「拱矢を径間で割った値」を「ライズスパン比」とも、アーチが完全な半円ならライズスパン比は0.5)
リブアーチ式石橋
(ribbed arch)
輪石(アーチ石)の長い方を縦(橋の渡る方向、川の流れと垂直方向に)に並べた石橋。中国系に多い。アーチを列ごとに造ることができ、幅が広い場合でも、一列分だけの支保工を造り、列ごとに移動して活用できる利点がある。反面、耐震性や大きな石材が必要で加工に手間がかかる等の弱点も。
支保工(しほこう) 輪石を支えるための工事用枠組み。アーチが完成したら、取り除く。設計にそって、木材などを利用して大工さんの担当。アーチを組み立てる為に重要なもの。timbering。
欄干(らんかん) 手すり部分。人が落ちないようにしたり、飾りともなる。肥後の石橋は欄干がないものも多い。hand rail。
高欄(こうらん) 端を反り曲げるなど、特に装飾を施した欄干をいう。勾欄(こうらん)とも。
親柱(おやばしら) 欄干の端にある太い柱、橋の名前などが彫ってあることも。
拱橋(きょうきょう) アーチ橋。拱とは両手を胸の前で組み合わせて敬礼する中国の礼儀作法で、その形がアーチに似ているところから、中国ではアーチ橋のことを拱橋という。日本でも使うが、眼鏡橋、目鑑橋、太鼓橋が一般的。
擬似アーチ 石の場合、迫り出す石の重心を下の石の上に置いて次々と石を積み上げていく工法(参照:桁からアーチへ)。そのまま積み重ねていくと、重心は最初の石の外にはみ出すことになるが、それぞれの石の上にも積み重ねることによって、その重さでバランスをとる。力学的にはアーチ(迫持ち voussoir)ではない。「持送りアーチ」とか「持ち送り(corbel)」ともいう。
持ち送り
(bracket)
石や木材などの小さな部品を次々に迫り出しながら上に積み重ねていく工法で、アーチに似ているが、これは力の伝わり方が垂直方向。アーチは垂直方向の重力を水平方向に変える(参照:桁からアーチへ)。昔から神社仏閣などの屋根などを支える部分の装飾に使われている。積み木やレンガなどで遊んでいるうちに自然に気付きそう。
迫り持ち 持ち送りと混同する場合もあるが,小さな部品を曲線の法線方向に並べて部品同士が互いに押し合うような力が働く構造のことで,アーチともいい,力が鉛直方向にしか働かない持ち送りとは違う。
 
 「眼鏡(めがね)橋というのは2連のアーチ橋のことでは、アーチが一つでは眼鏡にならないのではないでしょうか?」とのメールをいただいたことがありました。しかし、虫眼鏡のように一つでも眼鏡と言います。何連であっても眼鏡橋と言っても構わないようです。
 ちなみに、眼鏡橋、眼鑑橋、目鑑橋、太鼓橋、拱橋、曲橋、反橋、虹橋・・・とアーチ橋を表す言葉はたくさんあります。また、眼鏡橋、眼鑑橋、目鑑橋の文字の違いを一緒にして「めがね橋」と書くこともあり、本ページの表題も「石造めがね橋の各部名称と用語」としました。

 橋長、拱矢、径間等の測定基準には、それぞれの橋の構造や測定する人によって、微妙な違いがあるようです。先日、閲覧者の方から拱矢と橋高に関して電話をいただき、測定基準のあいまいさ(本ページの記述にも)に気付きました。解る範囲で更新してみました。石橋研究家の浦田さんにお尋ねしたら「これまでがあいまいだった、測定基準を統一しなければ!」とのことでした。今後も、より正確な表記を目指し、解り次第、更新して参りたいと思っています。私たちが気付かない誤り等が他にもあるかとも思います。お気づきの点等、ご指導・ご指摘いただければ幸いです。今後ともよろしくお願いします。

最終更新:2009/12/30

<制作>熊本国府高等学校パソコン同好会


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