メールでのアドバイス(肥後の石橋への) |
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めがね橋やアーチについて、メールで教えていただくことも多く、私たちだけでなく、皆さまにも参考になるかと思いますので、ここに紹介させていただきます。2008/05/12
「肥後の石橋」大変面白く、興味深く拝見いたしました。こって牛とモーします。少し思いついたことをメール差し上げます。 アーチの連続したトンネル状ものはarcadeじゃなかったでしょうか?vaultはアーチを四方に並べて作った天井(修道院などの柱の林立した部屋の写真などをごらんになったことがありませんでしょうか)だと認識していました。 よく商店街をアーケイドと言いますが、ヨーロッパに行けば道路側にアーチを縦に並べ、アーチ受け(迫受け)を設け、建物側とアーチのトンネルで渡したアーケイドが商店街になっています。コリドール(回廊)はそれをぐるっと回した物だと思います。 半円アーチは荷重が真下にかかりますので、迫受けに横向きの応力が働かず、とても安定しています。ローマ時代の水道橋などすべてこの半円アーチを用いています。その代わり橋脚を多く必要とします。 両岸の地盤がしっかりしていればその横向きの応力を受け止められるので、半円よりゆるい(アールの大きい)アーチをかけることが可能です。一般的には安定したスパンアール(アーチ半径をスパンと同じ大きさにする)を使います。この場合円弧の角度はちょうど60°となり、下からの突き上げにも上からの荷重にもバランスの良い強固なアーチが組めます。 この大きなアールのアーチは、橋の高さを低くしたり橋脚の数を少なくしたい時に有効ですが、両岸が強固な地盤を持たない場合は使えません。そこでそんな時橋脚には下向きの応力しかかからない楕円アーチを用います。もちろんモーメントはかかりますがますが、重い石材の自重によって打ち消されます。石材の圧縮応力は増します。肥後にはこのようなアーチは見られませんでしょうか? 逆に開口を大きく取りたければ尖塔アーチを用います。橋脚のボリュームを減らせますので、谷が深い場合は石材が少なくてすみます。ゴシックのアーチがそれです。 最後に私は工業窯炉の技術屋でして自分でも多くのアーチを架けてまいりました。そちらの方面では「持送り」を「架け出し」と呼んでいます。 添付した写真はすべて私が撮ったものですからもしお使いになっても心配はご無用です。さらに良いサイトにお育て下さい。(以上、Kotte_ushi様より)
ありがとうございました。訂正させていただきました。送っていただいた写真も石橋のページ等で活用させていただきます。専門的な知識に疎い私たちPC同好会、今後ともよろしくお願い致します。(2008/05/08) |
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貴サイトを読み進むうちさまざまな興味がわきとても楽しませていただいています。 ところで、アーチの曲率についてですが、先日メール申し上げたような楕円アーチも逆の卵型のアーチも、実際に施工する側からすれば実に簡単です。事実ローマ時代以前からでも長い施工の歴史があります。 通常アーチを組むにはまずテーパー状の部材を加工しておきますが、このテーパーを2ないしは3種類作っておき、混ぜ率を変えれば自在に曲率を変えることが可能です。 楕円アーチの場合、普通は2つの曲率を持った擬似楕円を使いますので両サイドをきついテーパー、中央を緩いテーパーの部材で組むだけです。卵形の場合はずれる恐れの少ない両サイドに直方体の部材を混ぜ積み上げます。加工を減らすためと型枠をかけやすくするためにこれもよく使われる工法です。(アーチの両サイドが開くために型枠を抜きやすい) 興味深い写真をご覧に入れましょう。南仏の有名なポンデュガール(ガール橋)のアップ写真です。アーチの下の方にわざと出っ張りをつけている(右上のガールの水道橋の写真)のが分かりますね。両側にも石が張り出た(右写真)状態で積まれていますね。 どのアーチを見ても同じように施工されています。しかしこれは飾りでも何でもありません。おそらく型枠を掛けるためにわざと出っ張りをつけたんです。出っ張りの下の部分は型枠なしでも積むことが可能です。さらに出っ張りは若干下を向いていますので、型枠をはずすときにここに打ち込んだ楔を抜くだけで簡単に外せます。もちろん外した型枠は次のアーチを積むときに使います。すべてのアーチに同様の出っ張りが付けられています。 他の出っ張りや凹みは足場の取っ掛かりだと推測されます。また、なぜ半円アーチにしたかというのは、それ自体自立するからです。スパンアーチなどだと、すべてのアーチが完成しなければ枠を外せません。これだけの規模の工事だと部材の互換性や工法の簡素化は非常に重要な要素になりますからね。(以上、Kotte_ushi様より) 楕円アーチを造る場合、2~3種類の輪石を用意して曲率を変えることや、ガール水道橋の型枠をかける為の出っ張りの役割、同じ型の半円アーチを使う理由等、勉強になりました。より効率よく架橋するために、様々な工夫がなされているんですね。ありがとうございました。(2008/05/12) |
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写真などよろしければご自由にお使いください。型枠や曲率調整など少し分かりにくいかもしれませんので図を添付しておきますね。それをみれば分かると思いますが、少々型枠を下げても両サイドの隙間はわずかです。アーチを架けるには型枠を外す時に一番苦労します。むりに外そうとすれば下からの突き上げでゆるんでしまい、大災害にもつながります。 当然ですが型枠が半円より大きければまったく外すことが出来ません。積み上げれば部材の荷重がかかりますので余計です。日本だと木材は豊富ですので平気ですべてのアーチに型枠をセットしてしまい出来上がれば壊すかもしれませんが、大掛かりな橋や木材の貴重な地方ではそうはゆきませんので枠掛けや使いまわしに苦労してきたようです。
ついでに石材の加工道具や型枠の一部の写真を添付しておきます。型枠はフォンテブロー修道院の大聖堂のリブヴォールト用の一部です。道具はセナンク修道院の物も含まれます。石灰岩質の砂岩なので加工は容易なようです。(Kotte_ushi様より 2008/05/12)
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本ページで使用している写真や図は全てKotte_ushi様が送って下さったものですが、本ページ作成にあたり縮小・圧縮した為、画質が落ちたことをお断りしておきます。
最終更新:2008/05/13
<制作>熊本国府高等学校パソコン同好会