熊本文学散歩


 

種田 山頭火たねだ さんとうかが残した「水に関する俳句」

 私たちが収集した山頭火の俳句1000余りの中に、水を詠んだ句がちょうど100句ありました。山頭火が詠んだ句は8万4千句とも言われていますので、水に関する句は1万句ほどあるかと思います。ちなみに前述の1000句に、酒の句はわずか10句ほど、酒好きで知られた山頭火ですが、俳句の数では圧倒的に水の句が多いようです。酒以上に水を愛したのでしょう。水にもいろいろありますが、歩きつかれ乾ききったのどを潤す水はまさに格別。本校の強歩会の救護所で飲んだ水、本当に美味かった!放浪の俳人、旅人山頭火だからこそ、酒より水の美味さ、水の有り難さを感じていたのでしょう。だから、水を詠んだ句を多く残したのでしょう。美味しい水が至る所にある熊本を第2の故郷とした理由もその辺りにあるのかも知れませんね。
 山頭火が残した水に関係する俳句の中から幾つかをここに紹介。「この句を!」など,ご要望がありましたらご連絡ください。
 
1 あすのあさの水くんでおくかなかな
2 あすの水くんでをく(なつめ)はまだ青い夕空
3 あちらむいて石仏が水のそば
4 あるいて水音のどこまでも
5 うしろから月のかげする水をわたる
6 うまいといえばくんでくださる水のしみいる
7 うまい水の流れるところ花うつぎ
8 おだやかに水音も暮れてヨサコイヨサコイ
9 おばあさんが自慢する水があふれる
10 けさは水音もよいたよりでもありさうな
11 こゝに住みたい水をのむ
12 ここまでを来し水飲んで去る
13 ここや打留(うちどめ)の水のあふれている
14 こころおちつけば水の音
15 こんなにうまい水があふれている
16 ぬれてしつとり朝の水くむ
17 ふとおもひでの水音ばかり
18 ふるさとの水をのみ水をあび
19 へうへうとして水を味ふ
20 ほんによかつた夕立の水音がそこここ
21 ほんのり咲いて水にうつり
22 めうとで水()む青田あをあを
23 もらうてもどるあたたかな水のこぼるるを
24 やつと汲みあげる水の秋ふかく
25 よい水音の朝がひろがる
26 飲みたい水が音たてていた
27 雨を受けて(おけ)いつぱいの美しい水
28 炎天かくすところなく水のながれくる
29 音たかく朝の水を汲みあげては行く
30 岩かげまさしく水が湧いている
31 汲みあげる水のぬくさも故郷(ふるさと)こひしく
32 月のあかるい水汲んでおく
33 月は見えない月あかりの水まんまん
34 行き暮れてなんとここらの水のうまさは
35 山からしたたる水である
36 山のけはしさ流れくる水のれいろう
37 山のふかさはくちづけでのむ水で
38 山の花は山の水に活けてをき
39 山の水はあふれてあふれて
40 山ゆけば水の水すまし
41 山柿たわわ水にうつりてさらに赤く
42 山茶花(さざんか)さいてお留守の水をもらうてもどる
43 字幕消えてうまさうな水が流れる流れる
44 秋の水をさかのぼりきて五重の塔
45 秋の夜ながれくる水のまんなかを汲む
46 秋ふかい水をもらうてもどる
47 春が来た水音の行けるところまで
48 春の水の流るるものを追つかけてゆく
49 食べるものがなければないで涼しい水
50 水が濁つて旅人をさびしうする
51 水にそうていちにちだまつてゆく
52 水に影ある旅人である
53 水ぬるむ冬眠の(こい)うごきはじむ
54 水のうまきを(かえる)鳴く
55 水のまんなかの道がまつすぐ
56 水もころころ山から海へ
57 水をへだててをとことをなごと話が尽きない
58 水音けふもひとり旅ゆく
59 水音のよいここでけふは早泊り
60 ()ひざめの水をさがすや竹田の宿で
61 雪のしたゝる水くんできてけふのお(かゆ)
62 谷の紅葉のしたゝる水です
63 誰にも逢はない水音のおちてくる
64 朝から水をのむほがらかな空
65 朝の水くみあげくみあげあたゝかい
66 朝の水はつらつとしていもりの子がおよいでゐる
67 朝早く汲みあげる水の落ち葉といもりと
68 南無観世音(なむかんぜおん)おん手したたる水の一すぢ
69 父子ふたり水をながめつ今日も暮れゆく
70 分け入れば水音
71 墓に護摩(ごま)水をわたしもすすり
72 落葉ふかく水汲めば水の澄みやう
73 立ちどまると水音のする方へ道
74 ()れて元日の水がたたへていつぱい
75 (からす)とんでゆく水をわたらう
 
 私たちが収集している俳句資料の中から選んだ水の句です。間違いもあるかも知れません。お気付きの点等、ご教示いただければ幸いです。水のページでと思いましたが、ここに。2009/01/20(最終更新:2009/01/24)

<制作>熊本国府高等学校パソコン同好会


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