熊本弁に誇りを!
方言は下品な言葉か?
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「熊本弁は下品な言葉!」と耳にします。熊本弁に限らず、方言全体に対して下品な言葉と思っている人が多いようです。本当に下品なのでしょうか。熊本弁にも敬語もあり、温かみのある優しい言葉使いも豊富です。
他にも、動詞の後に「~なはる」「~らす」「~す」のような語を続けたり、動詞の前に尊敬の接頭語「お」を付けた敬意表現も。熊本弁にも、ていねいな言い回しがいろいろあります。例:「オ病気ャ 良ウナンナハリマシタロカ」「オ風邪ハ オ引キマッセンカ」等 熊本弁は元々公家言葉が原型との説も。同じ意味の文末助詞にしても、丁寧さの段階が何段階もあります。元々熊本弁は「美しく、魅力的で、素晴らしい表現力」をもった言葉です。私たちが方言を使う場合は、気心の知れたもの同士で「敬語を必要としない」時が多く、自然乱暴な言葉を使ってしまい「品の悪い言葉」だと誤解されている面があるのでは。もっと「優しく思いやりのある上品な熊本弁」を知って、後世に受け継ぎたいものです。 敬意の度合いが多彩な助動詞がいろいろあります。敬意度が高いものに「ナサル」や「ナハル」があり、「行キナサル」や「行キナハル」などと使います。地域差もあり、天草では「ナス」が敬意が高い助動詞です。「ル」「ラル」となると軽い敬意となります。「行かス、言わス、居ラス」等の「ス・サス」もありますが、最近では敬意度が低下し、どちらかというと少々ぞんざいな用法というのが県内では多数派。しかし天草などでは、敬意の度合いはとても高いようで、他地域との敬語トラブルの例として引き合いに出されます。一方、球磨地域では「行きナハンモス」などの「ナハンモス」もかなり敬意度が高いようです。 挨拶に「ゴメンクダハリマッセ」「居ンナハリマスカ」「ゴブレイシマシタ」など。お詫びの挨拶に「スンマッセンナーアータ」などがあり、文末にナーアータやアータを添えて丁寧な気持ちを更に追加します。アータとは二人称の「貴方」。「貴方」は元々敬意度が高かったので、文末に添えて敬意をこめたようだ。しかし、二人称は共通語も使われる内に,何故か敬意度が低下していくとのことです。それは熊本弁だけでなく日本語全体のようですが、その理由は?仕事に対する賛辞やねぎらいの挨拶として「ガマダシナハリマスナ」「」キツカッタナー」「オオゴツデシタナ」「エライコツデシタ」なども。 ハイリョウスル(戴く),アガル(参上する)などの謙譲語も熊本弁の特徴でしょうか。「コラヨカモンバハイリョウシマシタ(これは良いものを頂戴しました)」「今度お宅にアガリマッシュウ(今度,お宅にお伺い致しましょう)」など日常会話に出てきます。 ところで、下品な方言を使うことは郷土への背信行為かとも。方言は郷土の文化財、その文化財を冒涜することは犯罪にも等しいのでは。一部のお笑いタレントが面白おかしく使う下品な熊本弁に影響されることなく、優しく美しい敬語をもっともっと知って、方言の名誉回復に立ち上がらなければと思っています。 |
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敬語2!(動物や自然現象にも) | |||||||||||||
「ほら、象さんのおらすばい」「牛さんの寝とらす」「アリさんの行列しよらす」「雷さんの落ちらした」など、象、牛、馬、アリ(蟻)、雷の動作にまで敬語を使う熊本弁。「~らす」は「~しておられる」という熊本の敬語です。荒っぽいというイメージの熊本弁ですが、虫にまで敬語を使っています。他の方言や共通語にもありますが、熊本弁での頻度は高いようです。 更には「来た」という言葉だけでも、「おいでなはった」「おいでた」「いらっしゃった」「きてござった」「きなさった」「きなはった」「きなった」「こらした」「こらいた」など、熊本弁の敬語は語彙も豊富です。「おいでなはる」は「おいで」+「なはる」、まさに敬語2(?)ですが、「おいでなはりまっせ(いらっしゃいませ)」などと、普通に使われています。TPOに応じ様々な敬語を使いこなしている熊本人ですが、それが敬語だと気付かない人も多くなってきたとのこと。私も他人のことは言えませんが、若年層を中心に熊本弁を知らない熊本人が増加しているようです。大事な地方文化の方言が消え去っていいのか、どぎゃんかせんといかんばい! |
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敬語に地域差!(県内でも地域によって敬意度が違う) | |||||||||||||
「居らス」とか「行かス」も敬語ですが、熊本市周辺では敬意度が低く、ややもすれば見下した表現となってしまい,目上の人には使えません。ところが天草などでは、直接目上の人に向かって「今日は家に居らスとですか?」と言えるほど敬意度が高いそうです。熊本地域では目上の人に対しては「オラス」では無礼で「オンナハットですか」と使います。また球磨地域で敬意が高いのが「ナハンモス」で、「行キナハンモス」や「行キナハンモシた」と使われるとのこと。しかし最近では天草や球磨でも、熊本式の「ナハル」や「ナル」が浸透してきているようです。地域間交流が進めば方言も淘汰されるということでしょう。このままでは将来、熊本弁に限らず、すべての方言が消滅する可能性も。 ところで地域文化としての方言を学校の授業で取り上げる必要はないのでしょうか。方言も大事な国語です。方言を知ることが共通語や古語、更には周辺諸国語学習にも繋がるものと思います。周辺諸国理解の糸口にもなりそうです。自分が育った地域や方言にもっともっと関心を持とうではありませんか! |
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本ページは熊本弁四方山の一部が独立して誕生。テレビやラジオのローカル番組で、面白おかしく使う「下品な熊本弁」の為に、「熊本弁」は「品がないとか、口調が荒い」と誤解されている面があります。そこで「熊本弁は下品な言葉だけではない、敬語も豊富なのだ」と訴えたいのです。更に充実できればと願っています。熊本弁に誇りを!目標は熊本弁に限らず方言全体の尊重と再生復活をめざす方言ルネッサンスです。皆さまからの投稿や情報提供を歓迎します。2009/02/18