中央教育審議会は、去る4月7日文部大臣に「少子化と教育について」(報告)を提出した。報告では「子どもは社会の宝であり、社会全体で子どもを育てていくことが大切」を基本とし、少子化の現状と要因を分析するとともに、少子化が教育に及ぼす影響を最小限に止めるための政策や具体的方策について言及している。その概要は次の通りである。
まず少子化の現状について、我が国の出生数は平成10年120万3149人、長期的に減少傾向にある。また、一人の女性が一生の間に生む平均子ども数(合計特殊出生率)は、平成10年には過去最低の1.38となり、現在の人口を将来においても維持するのに必要な水準である2.08を下回っており、我が国の人口は、減少していくと見込まれている。
少子化の要因については、第一に未婚化・晩婚化の進行があり、その背景には、子育てへの大きな負担感、出産後家庭生活と仕事との両立の困難さ、結婚に対する個人の考え方や価値観の変化、親への依存期間の長期化などがあるとしている。
次ぎに、少子化が教育に及ぼす影響については、子供同士の切磋琢磨の機会が減少すること、親の子供に対する過保護、過干渉を招きやすくなること、子育てについての経験や知恵の伝承共有が困難になること、学校や地域において一定規模の集団を前提とした教育活動やその他の活動(学校行事や部活動、地域における伝統行事等)が成立しにくくなること、良い意味での競争心が希薄になること、などが考えられるとしている。
次ぎに教育面から少子化に対応するための具体的方策については、家庭教育が全ての教育の出発点であり、基本的な生活習慣生活能力、豊かな情操、他人に対する思いやり、善悪の判断などの基本的倫理観、社会的なマナー、自制心や自立心など「生きる力」の基礎的な資質や能力を家庭で培ぅことが重要としている。
学校教育に関しては、家庭・地域での様々な活動や体験と相まって学校における学習や生活を通じて児童・生徒がそれぞれ豊かな価値観・価値体系を作り上げていくための基礎をつくり、そして、小学校以降の学校教育においては、男女がお互いに協力して家庭を築き、子どもを産み育てることの意義などの学習を「家庭科」などを通じて充実する。更にカリキュラム全体の中で少子化高齢化社会の問題を児童・生徒が考えることができるように工夫する必要があることなど提言している。
少子化は、教育そのものの問題であるばかりでなく、学校経営にかかわる問題でもある。熊本県の場合、中学校卒業者数は、平成11年と比較し、10年後の平成21年には6400人、15年後の平成26年には7800人が減少すると予測されており、この数は、熊本県の私立高等学校全体の定員数とほぼ同じ大きな数である。これまでも少子化を視野に入れてきたが、今後は更にこれを重視し、学校経営にあたる時期にきていると考えている。