過去から現在、そして未来
近未来のインテリジェンススクールを目指して
熊本国府高等学校CMIチーム
(1992年3月発行「研究紀要第Ⅰ集」より)
本校の前身は「女子商業」という名のごとく、そろばんの名手で、成績処理にしても、数字を目で追うだけで合計や平均など、たちどころに計算できるという職員も多く、パソコンでの成績処理など、「まどろっこしくて」という環境に支配されていた。県下に先駆けて導入したコンピュータ(FACOM230-10)による入試処理(昭和45年)にしても、このくらいの処理なら、手処理が速いと取り止めた(昭和52年)という歴史を持つほどである。
それ故に、本校のCMI(Computer Managed
Instruction)システムは単にコンピュータ処理をするだけでは、成功などおぼつかないであろう。一度入力したデータを、いかに各分野、各部署で、効率よく活用していけるかが、特に大切な要因となろう。従って、このことを最大主眼にCMIシステムの構築にあたりつつあるのである。そして、更に事務処理の大幅な効率化を図ることができれば、よりきめ細かな教育を行なえる時間的及び、精神的な余裕をつくりだしていきたいものである。
本校におけるパソコンの歴史は、PC9801-VMが昭和62年5月に1台、職員室に導入されたのが起源となる。個人レベルでは昭和56年ごろから個人的にパソコンを購入している人もいたのだが、クラス単位の成績処理プログラムなどを作成して、あくまでも個人的に活用していたにすぎない。最初、職員室にワープロ(2台)とパソコン(1台)が入ったときも、パソコンをワープロとしての活用を認めなかった(既にワープロはワープロ室に50台、職員室に2台設置され、それに対してパソコンは1台しかなく、ワープロとして利用するとパソコンとしての利用時間が削られるための措置であった)ためか、わずか数人が活用するにとどまっていた。それは当時自作していたBASICプログラムの使い勝手が(特にデータ入力やデータファイル操作部分において)悪かった面もあった。
しかし、昭和63年2月には、パソコンを使った入試処理プログラムをBASICで作成してのデモンストレーション(鍋島教諭)等もあり、職員間へも急速にパソコンへの期待と夢が膨らんでいったと思える。
また、昭和62年頃になると、「マルチプラン」とか「1-2-3」といった利用価値の高い表計算ソフトも出まわり、データ入力もより簡単になり、また職員室のパソコンも増えてきた(昭和63年には2台となる)。そのために、表計算ソフトを利用しての成績処理をやる人は次第に増加していった。しかし、なお組織的な活用というには程遠いものがあった。
そして、何といっても平成元年こそが、本校のCMI元年となろう。着任早々の木下校長の発案で始まった先進校見学(8月、一部参考資料あり)などが、一連の「パソコンシステム導入への布石」となった。先進校のすばらしさを見るにつけ、本校でもできるのかという不安もかすめたこともあったが、コンピュータへの期待もますます膨らんでいった。それが、瞬く間の業者選択とハード決定という動きになり、「はじめに業者とハードありき」という旅立ちには、当初、職員間にも戸惑いと不満の声もあったことも事実ではある。しかし、遅れてしまうという焦り(?)の中にかき消され、平成2年3月にはパソコン4台(PC9801RX51)が職員室に導入された。今までの2台に加え、6台となっていったのである。
6台のパソコンが入ったといっても、職員間には、まだパソコンへのアレルギーが抜け切れない人もあった。「パソコンの為、職員室が騒がしくなり、ノイローゼになりそうだ。」の声もあった。パソコンに対する知識差も大きく、全校一斉パソコン処理への道ははるか遠いものと思われた。
CMI担当者としても、今年中(平成2年)に各職員がパソコンに慣れてもらって、「来年(平成3年)からでも、まずは各クラスの成績処理、再来年には学年処理!・・・・」などと、考えていたのだ。
ところが、平成2年4月はじめの学年朝礼で、「今度の実力テストの集計をパソコンでやりませんか!」などとの積極的な発言もあり、あわてて作成したのが、ロータスの「1-2-3」を利用した実力考査処理システムであった。
当初、担当者が属する第2学年だけをと考えてやったのだが、他の1・3学年も、このシステムで1年間処理を行なうことになったのである。これも担当者からの要請ではなく、あくまでも各学年の自主的な判断によるパソコン処理への移行であった。
このシステムの概略を羅列してみたい。
と、なる。そのときの、「操作注意プリント」を、後の資料に含めているので、ご参照のほどを。
何はともあれ、失敗やミスはあったが、どうにか、1学期を乗り切ることができた。そして、別項(パソコン実習システム)で述べる夏期職員研修である。
平成3年4月からは、実力考査処理、定期考査の処理及び各種教務提出帳票を含めた成績処理を実行することになった。基本的には、前年度の実力テスト処理システムの流れを踏まえたものであり、同じくロータス社の表計算ソフト「1-2-3」を用いたものである。成績処理システムのうち、新しく付加された部分の概要を以下に示すことにする。
以上の処理のために、取り急ぎ作成しただけの、仮のシステムではあるが、次のような点を考慮して作成した。
個人別の成績表(出欠や検定を含む通知表カード)も、技術的には問題はないのだが、今回の統一帳票からははずすことにした。個人カードにまで及ぶと、出力が全クラス一斉になることで、プリンタの能力に問題が残るための処置である。パソコン室等を利用することでも解決の方法はある。個人的には以下のような帳票を先のデータを使って、マクロや関数を用いて、自動出力している例もあるので、紹介したい。
この成績ワークシートの中には、以下の3帳票が作成されている。
利用方法は、以下のとうりである。
なお、平成4年度からは、新たに出欠の記録を集計するワークシートを付属させ、成績一覧のワークシートをリンクさせて利用するようになっている。
学年末には、各学年成績を元に新学年のクラス編成を行なう。このデータは学年成績や各実力考査及び各生徒データのワークシートから必要データを結合させて作成する。できるだけマクロ等を作成し、自動化には努めているものの、3学年40クラス以上の処理というものは面倒ではある。早急にワークステーションを利用した「新システム」へ移行しなければと考えている。
出力帳票やデータを次にあげておく。
ロータス㈱の表計算ソフト「1-2-3」を利用した理由は、たくさんあると思われるが、思いつくままあげてみたい。
しかし、問題点も多々ある。最初から予想されたものもあるが、実際に利用していくうちに気付いたものもかなりあった。このことは最初の設計段階で、更なるデータの整理・分析を怠った担当者の力量不足でもあると反省しているところである。気付いた点をいくつかあげておきたい。
以上の問題点をもとに、この成績処理システムの今後の夢を述べてみたい。前項で述べた問題点は本システムのままでも、解決できる方法は種々ある。しかし、よりよい本格的なシステムを構築するためには、パソコン(以下PCと略記することもある)の大衆性的長所を生かしつつ、ワークステーション(以下WSと略記することもある)の高機能性を併せて利用していきたいと考えている。
「1-2-3」のデータ入力や操作性とワークステーション上のリレーショナル・データベース「UNIFY」の大容量性をうまくかみ合わせていきたい。すなわち、「クラスデータ入力はPCの1-2-3で、全体処理及び管理はWSのUNIFYで!」というPCとWSの分業処理を次年度の目標としている。そのためにも担当者はUNIFY及び、それらを統合したアプリケーション開発ツールであるACCELLの修得に努力している。
ワークステーション及び、UNIXについては、「パソコン実習システム」の項で述べることにして、ここで「UNIFY」及び、「ACCELL」について簡単に紹介しておきたい。これらは、そもそも「入試管理システム」構築においてオムロン株式会社が利用したもので、本校にも紹介していただいたものである。
「UNIFY」は、米国UNIFY社がUNIX用に開発した本格的なリレーショナル・データベース・マネージメント・システム(RDBMS)である。特徴としては、検索方法を4種類も(ハッシング、B-treeインデックス、リンク、バッファドシーケンシャル)持ち、検索要求により最も有利な方法を自動選択したり、各種プログラミング言語から容易にアクセスも可能であり、機密保護機能や、トランザクションロギング(ファイル再生)機能による信頼性とか、標準的データベース問い合わせ言語であるSQLの使用などがあげられよう。
「ACCELL」は、アプリケーション開発に必要なデータベース(UNIFY)、ウインドウ・インターフェース(画面に応じてズームウィンドウなど設定機能)、アプリケーション・ジェネレータ(アプリケーションを素早く開発できる機能)、4GL(ジェネレータで作成した大まかなアプリケーションの細部作成に便利なプログラミング言語)の4つの機能を統合したアプリケーション開発用統合システムである。アプリケーションソフト開発に優れた、利用価値の高いソフトウェアであると思える。
なお、ACCELLもUNIFYも日本語版の開発・販売元は、大阪の株式会社エアーで、その講習も当地で随時実施されている。