暇つぶしに
数学(?)に挑戦しよう!


古代から知られていた美しい比率
黄金比について

 


 

黄金おうごん比と黄金長方形

様々な長方形を描いてみましたが、黄金長方形のAとB、長辺と短辺の比違うように見えませんか?目の錯覚も面白いですね。 黄金比とは,古くから伝わる調和的で美しいと言われてきた比率です。黄金比を使ったものは安定感があり,美しく感じると言われています。
 私たちが品物を選ぶ場合,無意識のうちに黄金比のものを選ぶ確率が高いとも言います。縦と横が黄金比となっている長方形が黄金長方形です。
 右に様々な縦と横の比の長方形(短辺の長さは皆同じ)を描きましたが,あなたも黄金長方形(AとB)が美しいと思いますか。しかし,美しさと言うのはその時の各人の感覚次第のようにも思えますがいかがでしょうか。

 私たちの周囲にある長方形に目を向けてみましょう。普通の用紙は少し違いますが,新書版(106mm×173mm)や名刺(55mm×91mm)はほぼ黄金長方形です。しかし,何とも半端な値ですね,黄金長方形を描くのは難しそうに思えますが,どうすればいいのでしょうか?
 

意外と簡単に黄金長方形が作図できます 黄金長方形の作図は意外に簡単。コンパスと定規を使って描いてみましょう。

  1. 正方形ABCDを描き,辺BCの中点をEとする。
     
  2. 点Eを中心としてEDを半径とする円弧を描き,BCの延長との交点をGとする。即ちED=EG。
     
  3. 長方形ABGHを描けば,黄金長方形の出来上がりです。
 
 いかがでしたか,簡単でしょう。そこでこの作図を基に,黄金比すなわち黄金長方形の縦(短辺)と横(長辺)の比を求めてみましょう。右上の長方形で,縦(AB)の長さを 1として,横(BG)の長さ x を求めてみましょう。三平方の定理を利用します。

 BC=CD=1,BE=EC=1/2,△ECDは直角三角形だから
 EG2=ED2=EC2+CD2=(1/2)2+12=5/4 よってEG=√5/2
 だから x=BG=BE+EG=1/2+√5/2=(1+√5)/2
 「富士山麓(さんろく)オーム鳴く」で √5=2.2360679・・・を使えば
 黄金比は 1:(1+√5)/2=1:1.6180339・・・ となります。
 ちなみに,「1.6180339」の覚え方に「イチロウ一派(いっぱ)三々九度(さんさんくど)」というのがあります。
 
 他にも,黄金長方形の定義のひとつに「長方形からその短辺を共有する正方形を切り取った残りの長方形と元の長方形が相似になる長方形」と言うのがあります。定義より,黄金長方形ABCDから,正方形ABEFを切り取った長方形FECDも黄金長方形,すなわち長方形ABCDと長方形ECDFは相似。この相似の関係からも黄金比を求めることができます。
黄金長方形縦(AB)の長さを 1,横(BC)の長さを x として方程式を作ってみましょう。
 2つの長方形が相似だから
 AB:EC=BC:CD で
 EC=BC-BE=x-1 より
 1:x-1=x:1
 よって x(x-1)=1
 これを整理して x-x-1=0
 この方程式を解いて
 xは正の数だから
 x=(1+√5)/2
  =1.6180339・・・
 
 黄金比の求め方は他にもあるようです。調べてみて下さい。

 黄金長方形の縦と横の比は 1:(1+√5)/2=1:1.6180339・・・
 ところで 1:(1+√5)/2=2/(1+√5):1=(√5-1)/2:1=0.6180339・・・:1
 よって「1:1.6180339・・・」と「0.6180339・・・:1」どっちも黄金比。
 (1+√5)/2 と (√5-1)/2 の2つの値 (1+√5)/2-(√5-1)/2=1 で,小数点以下の数字はどこまでも同じ!計算式を比較すれば当たり前のことですが,面白いとは思いませんか。互いに逆数ですが,逆数との差が1になるのもこれだけ(x-1/x=1 より)です。
 
 ところで,自然界には黄金比が次々と出没するようです。ミツバチの群れにおける雄と雌の数を調べると,どのミツバチの巣ても,雌の数を雄の数で割れば,黄金比になるらしいとか。人体も「身長をへその高さで割ったら」「肩から指先までの長さを,肘から指先までの長さで割ったら」「腰の高さを,膝の高さで割ったら」,他にも「手の指,足の指,背骨・・・・」黄金比に繋がる数値が次々,もちろん個体差があり,全てが完全に一致するのではなく,近い値をとるということです。「黄金比になる場合が理想的体系!」とも。確か,ミロのビーナスは黄金比となっているとのこと,理想体型なんですね。自分の体型を測定すると・・・厳しいでしょうね。

 ところで,隣り同士の2項の和が次の項となる「フィボナッチの数列」で,隣り同士の項の比が黄金比に近い値ということも興味深いことです。フィボナッチの数列項の比

1 1 2 3 5 8 13 21 34 55 89 144 233 377 ・・・
  1 2 1.5 1.6667 1.6 1.625 1.6154 1.6190 1.6176 1.6181 1.6180 1.6181 1.6180 ・・・
 どんどん黄金比に近づいていきます。面白い現象と思いませんか。フィボナッチの数列や黄金比が自然界に多く存在するというのは全く偶然なのか,それとも必然的な要素があるのでしょうか。黄金比は美しいから自然界に多いのでしょうか,それとも自然界に多いから美しく感じるのでしょうか。「鶏が先か,卵が先か?」みたいですね。いずれにしても,何か魅力的で興味深い比であることには違いありません。
製品等 長辺 短辺 長辺/短辺
新書版 173 106 1.632075
名刺 91.0 55.0 1.654545
デジカメA 94.9 57.1 1.661996
デジカメB 105.0 59.2 1.773649
デジカメC 91.6 56.8 1.612676
DAP1 103.5 61.8 1.674757
DAP2 110.0 61.8 1.779935
DAP3 41.2 27.3 1.509158
本校HP画像 433 270 1.603704

 黄金比や黄金長方形,何とも半端な数で美しい形,だからこそ意識の有無に関係なく,古代から多くの優れた建築・彫刻・絵画等にとり入れられたのでしょう。クフ王のピラミッド,ミロのビーナス,最後の晩餐,ノートルダム寺院,聖徳太子像,能面等々,例をあげれば尽きません。これらの作者が全て意図的に黄金比を使ったというよりも,デザインを追及していくうち,いつの間にか黄金比になっていたという場合もあるのではないでしょうか。どちらにしても,デジタルカメラやデジタルオーディオプレーヤー(DAP)など,最近流行の工業製品のデザインにも取り入れられています。右の表は,新書版,名刺,市販のデジタルカメラやデジタルオーディオプレーヤー(DAP),本校のホームページの画像の長辺と短辺の長さと比率です。長さの単位は画像以外はmm,画像はpixelです。ハイビジョンテレビの画面比も16:9で比率は1.77・・・,ほぼ黄金比。身のまわりにある長方形の縦横の比を調べてみるのも面白いかも知れません。

 非感情的な側面が強調されることが多い「数」ですが,深層心理に関わる感覚や感情に強く訴えるものを持っています。数や数学は人間味に欠けると思われがちですが,意外と人間的というか情緒豊かな面もあるようです。毛嫌いせずに近づいてみましょう。きっと,数学の楽しさや面白さが見えてくるはずです。計算が苦手だったら,電卓を使えばいいんです。皆さん,気楽に数学を楽しみましょう!
 

 本校ホームページを飾る画像(写真)の大きさは「433×270」。何でこんな半端な数字なの?433÷270=1.6037・・・ 何と,ほぼ黄金長方形!先週の日曜日(2006/02/05),風邪で寝込んでいて,このことを思い出したのが,本ページ作成のきっかけ。現在のホームページをデザインして卒業していったPC同好会の井手口君は意識的,それとも無意識だったのでしょうか? いずれにしても黄金長方形の美しさを利用していることには違いありません。井手口君のセンスに改めて感心しているところです。(2006/02/13)
最終更新:2009/03/13
 

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