暇つぶしに
数学(?)に挑戦しよう!


大きな数の話です。
熊本は八代地方に伝わる民話「彦一とんち話」です。
会話に,熊本弁や八代弁を混ぜくっとりますので,解りにくいかも。
 


 

彦一どんと殿さん

将棋盤,ます目は9×9の81 とんちで有名な彦一が,八代の殿さんから手柄のほうびをもらうことになります。
 「彦一,何でちゃよか,おまえの好きなものをほうびに与えるから,好きなものを申せ。」
 「いや,たいしたこつぁしとらんけん,いりまっせんバイ。」
 「何ば言うとるか。やると言うんだから,何でんよかから,申せ。」
 「殿さん,本当に何でん良かとですか?」
 「俺は殿さんバイ,何でんでくるけん,申せ!」
 そこで,彦一の言うことには,
 「殿さんな,将棋ば好(し)ートンナハルですね。将棋盤の最初の”ます目”に米を1粒置いてくだはり。2番目の”ます目”には2粒,3番目には4粒,4番目には8粒,・・・・・というふうに,将棋盤の最後の”ます”まで米粒を置いていって,将棋盤全体に置く米粒バもらおっごたっとバッテン,良かですか?」
 「何や,そんくらいか。彦一は欲んなかな。よかバイ。持ってけ,持ってけ。」
 「本なこつ,良かっですか? そんなら証文ば書いてくだはりまっせ。」
 殿さんな「将棋盤の各ますに,次々と倍々にして置いていく米粒を彦一に与える」という約束を,文書にして渡しました。
 ところで,この米粒の量は,どれだけになるのでしょう?
 殿さんは彦一との約束を果たすことができたのでしょうか?


 この米粒の数を計算してみましょう。
1+2+4+8+16+32+64+128+・・・・
 将棋盤のますの目は,81(=9×9) ですから,
 初項が1,公比が2の等比数列の,初項から第81項までの和となります。
 よって等比数列の和の公式を使えば,「2の81乗-1」 となります。
 これは,25桁の数となります。25桁の数で最も小さい数でも,
1000000000000000000000000(=10の24乗)
 米粒100粒で1gとすれば,100000粒で1kg,100000000粒で1トン。
1000000000000粒で1万トンとなります。すなわち,10の12乗粒で1万トンです。
 日本で年間生産量は約1000万トンだから,10の15乗粒です。
 よって,彦一がもらおうとした米粒の量は
(10の24)乗÷(10の15乗)=10の9乗=1000000000
 すなわち,日本全国で生産される米の「10億年」分です。
 八代の殿さんが自由にできる米の量ではありません。
 またしても,彦一のとんちにやられた殿さんでした。

 実際に計算すると,米粒の数は2417851639229258349412351(写真部の茶谷さんがそろばんを使って計算してくれました)
 米50粒で1g(理科実験室で白米を計ってみました)となりますので, 日本全国の生産量の約50億年分になります。

 2の81乗という数というのは,とつけみにゃあ太か数です。

 
 それでは「1日目は米を1粒,2日目は2粒,3日目は4粒と,日毎に倍々の米を持ち帰ってよい。ただし,自分で持ち帰れる量だけ!」としたら,どうなるでしょうか?
 先ほどと同じく
1+2+4+8+16+32+64+128+・・・・
 31日目には230(=1073741824)粒,50粒が1gだから 1073741824÷50÷1000÷1000=21.47・・・で,約21トンになります。とても一人で持ち帰れる量ではありません。どう考えても,23日目の83kgが限度かと。よって,23日目までに持ち帰ることができる米は223-1(=8388607)粒,およそ168kg,これは大した量ではありませんね。殿さんがもう少し知恵を働かせていたら,彦一どんと良い勝負だったでしょうに。

 (この話と似たものが他にも,一休さんや曽呂利新左衛門,インドやロシアの昔話など世界各地ににも残っているようです。大元は古代インド辺りかも知れません。それがどんな経由で日本へ伝わってきたのか,これも興味深そうです。)
 

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