先ほどの羊飼いのその後です。
帰ってくる羊の数の確認には成功したのですが,また悩みはじめました。
小さな「数」を表すのには,指で表現できますが,より大きな「数」を表現するには,袋の小石を示すだけでは不自由です。
「他に,何か良い方法はないのか?」ということです。
新たなアイデアは,皮袋の数を増やすことでした。
赤い袋に小石を10(左小指)入れるのと黄色い袋に小石を1(右親指)入れるのを同数だと考えるのです。
例えば,黄色に小石が3(右中指3),赤色に小石が9(左薬指)入れておけば,39を示すことになるのです。
赤い袋が1の位を,黄色い袋が10の位を示すのです。 この方法だと,袋の種類を増やすことによって,より大きな数を表すことができます。
すばらしい発見だよね! 位取り法の発見です。このように手の指10本を基に生まれたのが,私たちが現在一般的に利用している10進位取り法(10進法)です。
ちなみに,英語のcalculate(計算する)の語源はラテン語のcalculus(小石)だそうです。calx(石灰石,石)に小さいという意味を添える接尾語を付けたものとのことです。やはり小石と数の計算,関係は深いんですね。
手足の20本を基に位取り法を完成させれば,20進法も生まれます。英語に20を表すscore(Abraham Lincoln のGettysburg
の演説の文頭に「Fore score and seven years ago 」の例も)という単語があったりするのも,20進法を利用していた名残りでしょう。
日本でも20日のことを「はつか」,20才のことを「はたち」といったりするのも,20進法の名残(真実かどうかは?)かも知れません。半紙の枚数の単位,1帖は20枚のようです。(ただし,海苔の1帖は10枚)
足の指は折り曲げることが出きない(?)から,足は左右2本と考えて,手指と合わせ,12を基に12進法が生まれます。
1ダースは12,1グロースは12ダースなどですね。
「12」は約数の数が多く物を分けるときには便利ですので,鉛筆やビールなどでは今でも使われています。
英語の数を,10進法で考えれば,11や12はone-teen,two-teenとなるべきでしょうが,eleven,twelveなどの単語が残っているのも,きっと12進法の名残ではないでしょうか。イギリスでは,1971年まで,お金の単位も20進法や12進法を利用していました。(1971年2月15日以前は,1ポンド=20シリング,1シリング=12ペンス)
また,5000年程昔の,チグリス・ユーフラテス川のほとりのことです。シュメール人とアッカド人が交易を始めました。このとき,シュメール人が使っていた重さの単位「ミナ」は,アッカド人の単位「シュケール」のちょうど60倍だったそうです。すなわち,60シュケール=1ミナ,これが60進法のルーツとか。60は10,12,20の最小公倍数でもあり,広い地域の交流に便利なので,各地にも広まっていったのではないでしょうか。今でも角度や時間の単位に60進法が使われています。
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