熊本国府高等学校長 石川博敏 今日の本校教育は、県内でも先駆けて導入された「コンピュータ教育」、我が国古来からの伝統文化に根付いた「礼法教育」そして心・技・体を日常鍛錬する「部活動の推進」の三本を柱としている。 その中でも特筆すべきは「礼法教育」である。日本の伝統文化を大切にしながら「こころ」が育つようにと、お正月には「鏡餅」や「破魔矢」「羽子板」、桃の節句には「七段飾りの雛人形」、端午の節句には「鯉のぼり」「武者人形」、そして七月には「七夕」の笹を飾るなど、古くから伝わる年中行事を校内で祝っている。 初夏の大空に泳ぐ「ひごい」、「まごい」、生徒諸君一人一人の願いをしたためた短冊が提げられた七夕祭り、さらには玄関ロビーに飾られた絢爛・豪華な七段飾り十五人揃いの雛壇等々、生徒のみならず私たち大人をも心和ませてくれている。 この礼法教育は、昭和六十三年(前身の熊本女子商業高等学校時代)に礼法教室が新設されたのを機に始められ、平成六年からは全学年に特設授業が導入されて来たと聞いているが指導内容は年々工夫改善され、平成十一年に指導項目、年間指導計画さらには項目毎の指導案等を網羅した礼法教育第一集が編纂され、翌年、平成十二年には指導資料集としての礼法教育第二集も編纂されている。それらの中で礼法の基礎基本としては、人を美しくする礼儀と、人間関係の基本である挨拶の励行を位置づけ、日常生活のあらゆる場で、他への尊敬、感謝、親愛の念を込めての言動ができるようになることを目標としている。 ところで、今日の社会は目覚ましく進展する一方で、人の心のあり様に端を発する痛ましい出来事が跡を絶たず、憂うべき事件、事故を連日のように耳にする。人が他者との関係を最初に持つ家族関係においても崩壊を感じる事態も発生するに至っている。 学校社会においては、深刻な「いじめ」問題、不登校や中途退学等学校生活への不適応、そしてニートのような若者の社会生活への不適応等々、人間関係の希薄さから生じると考えられる諸々の出来事は年々とその深刻さを増しつつある。 国も今日、この事態を深刻に受け止め、新しい教育基本法等で伝統文化に根付いた心の教育の重要性を強調しているところであり、道徳教育の一層の重要性を訴えている。 国府高校としても、今日の状況を踏まえ、築き上げてきた内容及び指導方法等を今一度見直し、次代を担う有為な人材に向けた「礼法教育」の一層の充実を図って行かねばならないと考える。 平成19年6月
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