熊本国府高等学校
新聞・雑誌で、「インターネット」という言葉を目にしない日はなく、その勢いに乗り遅れたら、情報化時代に取り残されるのではないか、と思わせるような情勢です。この現象は一過性の流行で終わるものかも知れません。現状では、まだ未開拓な部分が多く、どう活用していくか、模索している状態です。しかし、車にしても「走る凶器」にもなりますが、現代社会では絶対必要なものとなっています。利用法によっては、私たちに大きなプレゼントを与えてくれるような気がします。使い方も、テレビやビデオ、洗濯機や電子レンジを使うのと何ら変わらないようにも思えます。案外、自動車の運転より楽かも知れません。インターネットは単なる道具です。文字や言葉で覚えるより、「実際に利用する」ことだと思います。
海外生活や交流を考える人は多いようですが、まだそれは簡単だとは言えません。インターネットなら、簡単に実現できます。外国の人と出会い、質問をし、その国の文化を体験できます。国内ばかりではなく、外国にも友達を見つけることができます。その道のエキスパートや各国の大統領や首相など、世界のトップとの出会いや交流も夢ではありません。世界の人々との交流や最新の情報を得ることのできるインターネットの利用価値は大だと思います。
ある生徒が感想を述べています。「インターネットを利用することによって、パソコンのすぐ隣に広大な世界が広がっていて、外国が身近に感じられるようになった」と。特に海外においては、インターネットを「道具」として、気軽に利用しているという実態を知っただけでも大きな収穫です。また、ネットワークにおけるルール・エチケットや情報入手・発信の方法等を肌で学ぶことができます。高度情報化時代を生き抜く上での大切な「道具」だと思います。
私たち教師にとっても、居ながらにして、新しくかつ必要な情報を獲得できるということは、実に重宝な「道具」です。教育とは、今を生きている子供たちではなく、次世代を生きる子供たちを育てることです。私たち教師は、常に新しい知識や、次世代を生き抜く為の方策を、常に獲得し続けていくことが必要です。地球的な視野で、思考・判断することが、より重要となります。インターネット活用における恩恵は多いようです。教師や学校の役割も、単なる知識伝達者から、学ぶ為の方策や場所とか、仲間との出会いの場の提供者へと変化するのではないでしょうか。インターネットは、単に情報通信の世界を変えるだけでなく、教師や学校の方向や在り方を、大きく変化させるのに役立つ「道具」ではないか、と期待しております。
より発展的な活用にあたっては、我々教師側の取り組み体制等、いくつかの問題点も残っております。しかし、まだ使い始めたばかりの、新しい「道具」です。学校教育への効果を引き出すには、「いつ?、どこで?、どう活用していくのか?」というふうに、これから考え、解決し、構築しなければならない部分ばかりかも知れません。また、このような最新の「道具」を利用する場合、教師(教える側)と生徒(教わる側)の距離が、更に縮まってきたのではないでしょうか。これからは、「生徒・教師が共に学んでいく」という「共同学習者」という関係が、更に高まってくるのではないでしょうか。私たちの役目は単なる知識を注入することではなく、生徒たちが学びたくなる「場所」とか、学ぶための「素材」や「方法」の提供にあります。その実現の為にも、時間と空間を超えた「新しい教育」の可能性を秘めている「インターネットの活用」に大いに期待していきたいものです。
この2年間の実活動の中での最大の喜びのひとつが、前述日誌の最後に記している12月20日「熊本文学散歩」のページが「’96ソニー全国中学生・高校生ディスク&テープ大賞」に入選したことかも知れません。他校からは遅れをとってしまいましたが、昨年春以来、パソコン同好会の生徒たちが、次々とWWWページを制作してきました。苦労して作ってくれたので、励みにでもなればと、コンテストに出品しました。入賞数10点程の中に入るとは考えてもいませんでした。生徒たちにとって、大きな自信となったことでしょう。また、文学には関心を持っていなかった私が、生徒たちが調べてきたものを見ているうちに、「山頭火」や「五足の靴」など、「自分でもその足跡を追って旅をしたい」と思い始めました。まさに生徒に教えられ、感化されたということです。これこそ「新しい教育の成果ではないのか?」と、ひとり微笑んでいるところです。このようなすばらしい機会を提供いただいた「100校プロジェクト」に深く感謝します。100校プロジェクトを通じて学んだものは、実に大だったと思っています。
最後に、私のように無知な担当者を暖かくご指導していただいた情報処理振興事業協会(IPA)、コンピュータ教育開発センター(CEC)、富士通、NTT、そして熊本地域ネットワーク研究会(KANS)の皆様に、心から感謝申し上げます。このプロジェクトで学ぶことができた知識や技術も大ですが、より広い人的な交流の輪を得ることができたことも大きな財産であり、成果であったと確信致しております。_(^_^)_(成)
(研究紀要原稿より)