火星の接近 2001
2001年6月に接近した火星の観測記録

 火星は地球と隣り合う軌道をまわる惑星で、2年ごとに地球に接近します。普段はそれほど明るくない火星ですが、地球と接近したときはかなり明るくなります。
 2001年6月に地球に最接近した火星は、−2等星という、星とは思えないほどの明るさになりました。最接近を過ぎた今では次第に遠ざかっており、徐々に暗くなっていきます。

 火星を望遠鏡で見ると、まるで火星人がいそうな気配を感じさせる、様々な興味深い表面模様を見ることができます。火星表面を望遠鏡で見ることができるのも、地球に接近している時だけといえます。

 火星が最も接近した日は6月22日でした。だから今は徐々に地球から遠ざかり始めていますが、まだまだ地球に近い状態なので、しばらくは明るく大きな火星を見て楽しむ事ができます。


 ここでは作者が続けてきた火星の追行観測を報告します。5月〜6月にかけて、表面模様のスケッチや簡単な撮影を行いました。

手持ちコリメートで撮影した火星 (2001年6月25日)

6月25日に撮った火星

望遠鏡の接眼レンズに直接デジカメを押し付け、オートモードでシャッターを切るという簡単な撮像ですが、火星の赤い円盤像がはっきりと写せました。ただ、露出オーバーで黒い表面模様は写りませんでした。
次回は何とか露光を短くして、表面模様を写そうと思います。



星座の中を移動していく火星
(5/18〜6/25)

約1週間おきに火星付近の星々を50mmレンズで撮影し、火星の動きがわかるように写真を重ね合わせて動画GIFにしてみました。位置の変化だけでなく、5月から6月にかけてわずかに明るさを増したのも判ります。
もうちょっと前から撮影していれば、Uターンする惑星特有の動きが判る作品になっていたはずですが。


● 火星観測(表面スケッチ)記録

5月17日〜6月25日の火星表面模様のスケッチ記録です。
ちょっと専門的に書いています。絵は雑ですが…。
(注:)5月のスケッチは火星の向きが異なっています

5月26日の火星スケッチ

2001.06.25 21h00m

光度: -2.4等 視直径: 20"
観測地: 自宅 機材: ビクセン
GP-R200SS・SM, LV5
シーイング: 7/10 中央経度:251°
 これまでの中で最もシーイングがよく、最接近の火星の模様をくっきり観測できた。梅雨の晴れ間の雲間観測のため、透明度も良好。ピントを合わせた瞬間、模様「大シルチス」がくっきり見えた。シンチレーションもほとんどない好条件のため、大シルチス以外の淡い模様もはっきり見えた。
 後で調べると、大シルチス(図の右上部)と繋がっている細長く淡い部分(図の左上部)は「キンメリアの海」と判明。火星のスケッチを続けてきたので、今では細かい模様まで見分けられるようになってきた。


5月20日の火星スケッチ

2001.06.17 23h台

光度: -2.4等 視直径: 20"
観測地: 自宅 機材: ビクセン
GP-R200SS・SM, LV5
シーイング: 6/10 中央経度:350°
 約半月ぶりに天気に恵まれ観測できた本日は、最接近している火星のあまりの大きさに、導入した直後、木星を彷彿とさせた。しかし、木星と同じほどの視直径ながらも、単位面積あたりの輝度は木星より強く、やっぱり火星なんだな、と実感。高倍率で捉えた火星の姿は、あまり赤みがなく感じられた。
 透明度・シーイング良好のため、表面模様を数十分かけてスケッチできた。いつも見えていた大シルチスではない模様を確認。光学系の影響により像がダブり、中々模様は見えてこなかった。とにかく、火星の大きさが印象的だった。


5月26日の火星スケッチ

2001.05.26 00h20m

光度: -1.9等 視直径: 18"
観測地: 自宅 機材: ビクセン
GP-R200SS・SM, LV5
シーイング: 6/10
 しばらく悪天候のため見ることができなかった。久しぶりに火星を見たこの日は、覗いた瞬間、明らかに一週間前の眼視より視直径が大きくなっているのが判った。また、本日はこれまでと違ってシンチレーションの影響もなく、像が安定しており、比較的シャープな輪郭と表面模様を捉える事に成功した。ちょうど火星が南中していたことも、少なからずシンチレーションの影響を抑えてくれたのだろう。これにより、表面模様「大シルチス」の詳細なディティールが判り、濃淡の具合も良く判った(スケッチ参照)。また、好シーイングのため、大シルチス以外の淡い模様も初めて漠然と確認できた(スケッチに描写)。なお、厄介な手動追尾での観測のため、じっくりと観れなかった。



5月20日の火星スケッチ

2001.05.20 02h50m

光度: -1.7等 視直径: 17"
観測地: 自宅 機材: ビクセン
GP-R200SS・SM, LV5
シーイング: 3/10
 今日も像はダブって見え、詳細に表面模様を確認できず。モータードライブの電池が切れたようで、手動追尾を余儀なくされた。この日は2日ぶりに見たのだが、火星の視直径が僅かに大きくなったように見えた。また、表面に見える弓形の模様も、いつものより観測時刻が遅いためか、今までの端の位置から中央よりに移ったように感じた。揺らぎの為、表面模様も漠然としか目測できないのである。しかし、思ったより、弓状の模様の曲がり具合は鋭角であると感じた。


5月18日の火星スケッチ

2001.05.18 02時台

光度: -1.6等 視直径: 17"
観測地: 自宅 機材: ビクセン
GP-R200SS・SM, LV5
シーイング: 3/10
 本日もシーイングは悪く、揺らぎの為、火星像安定せず。地理的なシンチレーションの原因が考えられる。時折シンチレーションが止まり、一時的な解像度の高まりがあるので、その時に、昨日よりも鮮明に表面模様のコントラストを得られた。火星のちょうど1自転後で、昨日の観測時と同じ火星面を見たことによると思われる。大シルチスと思われる半球の弓状の濃い模様の精確な位置、形状を確認する事ができた。アフリカ大陸状であることが判った。 


5月17日の火星スケッチ

2001.05.17 01時台

光度: -1.6等 視直径: 17"
観測地: 自宅 機材: ビクセン
GP-R200SS・SM, LV5
シーイング: 3/10
 これまでの観測の中で、最も安定した火星像を得ることができた。とはいえ、視野内では幾重にもダブって見えており、はっきりした円盤像を捉えられず。しかし、向かって左側の半球には表面模様の一部と思われる、弓形の濃い部分が確認できた。恐らく本日もシーイングは比較的安定していなかったと思われる。火星像は絶えず揺らいでいて、一瞬解像度の高い時に、先述の表面模様が観測できた。なお、後で調べた結果、この弓形模様は「大シルチス」であると予想される。