しし座流星群 (1998.11.18)

大出現が騒がれ、大フィーバーとなった1998年のしし座流星群の、作者自身の観測を紹介します。


 しし座流星群極大日の11月17日は、日中はずっと曇り空だった。このため、その夜の流星群のピーク時の天気が危ぶまれたが、夜になると晴れ間も少し見えるようになったので、雲の合間から見られるだろうと安心した。皆さんもご存知の通り、去年のしし座流星群はマスコミもトップニュースで大々的に取り上げていて、さすが33年ぶりの流星雨だけあるな、と感じた。毎年見られる他の流星群極大のときは世間で話題にならないけど、今回のしし座流星群に限っては、やはり「33年に1度」ということで、ハレー彗星接近の時以来の大天体ショーとして大きく報道されていたように思う。テレビでこれほど報道されるとは思いもしなかった。やはりそれだけ人々の流星に対する興味が大きかったことを感じさせられ、そのことは天文ファンとして嬉しく感じられた。

 そんなしし群極大の当日、テレビのニュースを見ていると、人々が大勢山などに見に行くということを知り、私が見に行くつもりだった山にも流星ギャラリーでごった返しそうな気配を感じた。このため、私主催の流星群観測会出席者と相談の末、我々の観測は人々が少ないだろう高原の広場を観測場所にする事にしたのだ。

 そして午前0時となり、我々は出発した。人はまずいないだろうと思っていたその広場には、なんとすでに大勢のギャラリーが来ていて驚いた。こんなに多くの人々が流星を見にやってきていたので、今回のしし座流星群の期待度の大きさを実感していた。その場所は見晴らしも良く、ここでなら、世紀の大流星雨観望にはもってこいの場所だな、と思った。ただ、周りには大勢のギャラリーが若者を中心にピクニック状態でたくさんいたから、あまり落ち着いて観測できる環境ではなかった。

 2名の同行者と共にシートを広げて観測スペースを確保し、観測態勢に備えた。しかし、やはり雲はなかなかとれず、その雲が憎らしく感じた私であった。そんな中、到着してしばらくした午前0時40分頃、ついに私は初めての流星を目撃することになる! それは、天頂方向に向かって、青白く非常に明るく輝きながら、尾を引いて優美に飛んで行った、かなり大規模な流星だった。明るさはマイナス4等ぐらいあったと思われる。これまでの流星群の観測で百個以上は流星を見たことがあった私だったが、あんなに長い距離を美しく輝きながら尾を引いて飛んだ流星は初めてだった。その美しさにちょっと感動した私だった。しかしこれごときで感動してられるわけもなく、「まだまだこのくらい、流星雨の序曲に過ぎない…」と自分に言い聞かせ、やがて来るだろう流星雨の観測態勢を整えた。しかし、雲がかなり多かったのでまだ流星はそれ1つしか見ることができず、雲がとれるのを待っていた。
そして、雲がだいぶん裂けてきて東の空にも雲が無くなってきた午前2時台、ついに流星が流れ始めた! 真冬並みに冷え込み、その上冷たい風も強く吹いていたので、寒さしのぎに低木の陰に場所移動し、たくさん着込んで毛布をかぶり、観測態勢に入った。

 そして、東の空を見続けた。すると、午前1時53分、ふたご座でピュッと2個目の流星が流れた! 飛んだ瞬間、周囲から歓声が上がり、隣の同行者達も声を上げる。そして、3個目は午前2時10分に現れた。次は約10分後の午前2時20分。そして2分後の午前2時22分にも流れ、さらにその4分後の午前2時26分にも飛んだ。この頃は次々と流星が飛んでいたので、1時的にペルセウス座流星群並みの活発な出現を見せた。だから私もそろそろ流星雨モードが高まるときがきたか、とワクワクしてきたのだった。しかし、それ以後はなぜか急に流れなくなり、その次に流れたのは約30分経った午前2時52分。私はどうしたことかと思ったが、それでも絶対に今夜は流星の雨が起きると信じていたので、まだ流星出現のピークを過ぎたとは思わなかった。だから、しばらくして再び流星出現が活発化することを願ったのだ。しかし、我々の期待とは裏腹に、その後急に流星はほとんど出現しなくなった。また、出現数の衰退と同時に雲も再び多くなり始めたので、なおさら見れなくなってきた。午前2時台のピークの時は3分間に1個の割合で見えたのに、午前3時台の1時間には、私はわずか4個しか見ることができなかった。午前3時台は2時台よりも雲が多くなったのでそのせいで見えた数が減ったのもあるが、やっぱり流星の出現数そのものも減ったのも事実だった。だから私は焦った。たくさん流れた午前2時台には真剣に空を眺めていた大勢のギャラリー達も、もう3時を過ぎた頃には空はあまり見ていなかったようだ。空が曇ってきたのと流星が流れなくなったのとで、私にも諦めの気持ちが出てきた。そのうち東の空はほぼ雲に隠されてしまっていたので、当初流星出現のピークが予想されていた午前4時頃には、もう私は観測を諦め、撤収することにした。

 やはり本当の出現のピークは予想された午前4時よりも早まって、午前2時頃だったようだ。結局わずか1晩で11個しか流星を見れず残念だったが、その分今年1999年のしし座流星群に大出現の期待が高まってきた。
 
 ところで、未明に流星観測を終えて車で帰っていると、午前4時半にも関わらず、阿蘇方面からの山を下る空港線の下り車線は、流星ギャラリーの帰る車が集中し、異例の大渋滞だった。しし座流星群がこれほど社会に影響を及ぼしたことが驚きだった。

 このように、流星の予想出現ピーク時刻は大外れで、実際のピークは予想よりもなんと10時間近くも早い、11月17日夕方頃だったらしく、当初観測条件が良いとされた日本からは、出現のピークが昼間に当たってしまい、結局流星出現のピークは見れなかったのである。